タイガーブックス、中吊り

先日、編集者の友人K氏から、私のこのブログについてお小言をもらった。ときどき書くのではよくない。短くてもよいから、きちんと毎週決まった曜日に出しなさい。そうです。しかし、毎週はとても無理だから、以前のようにせめて月二回、それで日にちをきめよう。とはいえ、こうしてさぼっている間にまた書くことがたまってきた。その後も、指圧の先生と「文字の食卓」の正木香子さんから「まだですか」と問い合わせをうけてしまった。

 

最初の頃のブログをあらためて見たら、あっさりとして短い。いつから長くなったのだろうか。長くなるから時間がかかる。

 

このブログの一回目に紹介した、羽良多平吉さんのデザインの『リリイのおくりもの』(1974年刊。羽良多さんは、ご自身でこれが最初に作った本だと「イラストレーション・セミナー 第一回」でおっしゃっていたが、1973年に『狼藉集』草森紳一著の装幀をしておられる。)を見つけてきた、タイガーブックス店主の笠井優さんが亡くなった。53歳。脳出血。タイガーブックスは、私の早稲田の仕事場の近所にある、ブック・カフェCat’s Cradleの店内の片隅に、彼が作った極小の古書店である。ここで佐野繁次郎や花森安治の装幀本をたくさん手にいれることができた。ほかにも、私が好きな装幀者の本を探してきてくれた。このブログで、彼が見つけた小さな宝石のような本のことを書いているが、まだまだ紹介する本がいっぱい残っている。合掌。

 

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これらは最近タイガーブックスで購入した観光案内図(11月にやったCat’s Cradleでの古書フェアの残り物とか)。こういう小さなパンフレットが好き。地図やカットの絵が面白い。

 

セーヌ県庁とパリ市観光委員会(COMITE DE TOURISME DE PARIS ET DU DEPARTMENT DE LA SEINE)が作った英語の、パリのガイドブック(1954年/166ミリ×110ミリ)。
手帖のように小さいポケットサイズ。観光案内所などで配っていたものだろうか。表紙はデュフィの絵。発行年は彼の没後一年というのは何か関連あるのかな。中のカットは、R.BOUWENSとクレジットがある。この挿絵が楽しい。

 

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開くとこうなる。手帖のようなコンパクトなサイズ。折りたたみ式で、縦に開くと情報が読める。各頁の下にブルーのラベルがありノンブルとindexになっている。

 

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〈扉〉の頁

 

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〈準備〉と〈税関〉の頁

 

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〈地図〉の頁。というよりは、名所の大体の場所。現在のように地下鉄やバス路線の地図はない。交通機関の説明は文章で他の頁にある。

 

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〈コンサート〉と〈レース〉の頁。競馬の案内がある。

 

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〈趣味があるなら〉と〈若い人なら〉の頁

 

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最後は、目次(INDEX)と省略文字の凡例(ABBREVIATIONS)

 

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「法師温泉 長寿館」のガイド(年代不詳/185ミリ×87ミリ)
千帆とサインのある表紙の絵は前川千帆だろう。この絵がよい。地図もよい。長寿館は法師温泉に一軒だけある140年つづく有名な旅館。この表紙の大浴場がホームページに載っている。

 

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このパンフの左側の短歌は与謝野晶子。

 

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〈草まくら手枕に似じ借らざらん 山のいで湯の丸太のまくら〉

 

右側は全部読めない。かろうじて〈……あした三国の峠たちわくる霧の下でこそ越路なり……〉と読める。誰だろうか。長寿館のホームページでも見つけられない。

 

この地図。楽しい。いい味。

 

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「高松案内」(年代不詳/150ミリ×105ミリ/ホッチキスで綴じてある)

 

表紙の描き文字と絵がよい。これも地図がよいのと、広告に使われている丸ゴの活字が面白い。地図は二種類あって、〈旅館 . 土産品店〉と〈料理屋 . 食堂 . カフエー . 遊郭〉の遊郭に時代を感じる。

 

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「箱根登山鉄道沿線案内」(522ミリ×370ミリ)この地図、ほのぼのとしてたまらない。双六みたい。法師温泉とも共通するデザイン。こういう地図を作りたい。

 

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この広告のために、こんな四角い下手な字をつくった理由がわからない。AM ラジオのあたらしいFM化のことを、このたどたどしくてふぞろいな書体で何をつたえよいうとしているのか。

 

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ああ、三越のお歳暮まで、四角い書体。流行か?

 

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変なゴシックだな。〈じ〉の濁点、〈う〉の第一画の脈絡と〈か〉の第二画のまっすぐな線。カクカクの書体だ。調べたら、片岡朗さんのiroha gothic 25icho。〈WAON〉のロゴの出来が悪いので気になって見ていたら、キャッチのゴシック体がすごい。おまけに、右の絵の犬のしっぽの位置も変。上すぎじゃないの?

 

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十貫坂教会のクリスマスイヴ・ミサ。「来なさい!」ですよ。すごいな。

 

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このブログ、来年からは定期的に月二回を目指します。みなさんよいお年をお迎えください。

 

今日の一曲はこれ。
I Should Have Been There To Inspire You/Paul Weller