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PAPERWALL。思いつきは、イギリスの有名なインテリア雑誌「Wallpaper」(壁紙)の前後を入れ替えてみただけ。紙の壁。電子メディアのブログで〈紙〉というのもなんですが、主な仕事がブックデザインなのでこのようなタイトルを考えました。紙の壁ですからたよりないものです。「三匹の子豚」でもさすがに紙の家はない。風が吹いたり火をつけられたらひとたまりもありません。
その1
早稲田の仕事場の近所にbook cafe “Cat’s Cradle”があります。週に一度くらいランチを食べに行きます。名前の通り、お店をやっているご夫婦はカート・ヴォネガットJr.のファン。店主が旅好きなので、本棚は世界の国別にわかれていて、それぞれの都市や国についての旅の本や小説、エッセイ、写真集があります。内装は自分たちの手作りで、椅子やテーブルも年代物がいろいろばらばらです。
ここの本棚の一隅に、左右約60センチぐらいの「タイガーブックス」という、個人古書店があります。50年代から70年代のいい装幀の本や絵本がはいってくる。ここで見つけた本がいっぱいたまってきたので、ときどき紹介します。
今日の一冊(タイガーブックス)500円
『リリイのおくりもの』 ブロンズ社 650円 1974年 装幀=羽良多平吉
羽良多さんの装幀とは思えない、あっさりしたデザイン。
A5変型。並製。縦210mm×横127mmの縦長の本。表紙は折り返しの袖があり、カバーの袖がその上にかぶさっている。表紙袖=64mm、カバー袖=90mm。カバー、表紙ともに片面がツヤのある紙(多分ミラーコート)。
帯は、幅86mmで白い紙に赤1色。帯袖=75mm。ただ帯というよりはもうひとつのカバーのよう。というのは、カバーの表1の帯でかくれた下にはタイトルはなく、表4とともにリリイのアップの写真だけ全面に。背にタイトルとサブタイトル。表1にタイトル「リリイのおくりもの」(新聞特太明朝体:YSEM)とサブタイトル「詩と童話、そして想いでのアルバム」と社名(石井中太ゴシック体:DG)。帯の背にかろうじて、〈いつか誰かに 出逢うために〉(石井中明朝体:MM-A-OKS)のコピーがあり、下に社名(DG)。表4は「今日は空が雨で出来てる」(タイトルはMM、歌詞の書体はかながK-LM-PT漢字は石井細明朝体)の歌詞と書籍コード番号と社名と定価。紙は本文の頭の4ページと同じマットコート系。
帯、カバー、表紙の折り返しの袖の長さが違うのは意図的なんだろうか。当時の紙取りの都合か。いずれにしても面白い。
帯のタイトルは〈リリイの〉と〈おくりもの〉の間が八分くらい微妙にあけてある。ひらがなつづくからかな。字間はかなりつめてある。しかし、背のタイトルは逆に字間をあけている。
見返しはない。本文96頁。本文と別紙で真ん中に、「リリイってだあれ?」と題した32ページの、彼女のポートレート写真に文章と詩の頁がある。1色だが刷色を濃いグリーンにしてある。
本文とは別に、前に6頁(遊び紙、表裏白/文字のみの本文扉とその裏にお母さんへに献辞=ここまでの4ページは、本文よりややうすいマットコート系の紙、文字は活版のゴシック。
次に厚めに本文用紙で始まるが、特色赤ベタに白抜きで線画の女性の半身像と写真撮影と協力のクレジット。裏はカラーでリリイのポートレート。次の頁からスミ1色の活版モノクロ本文が続く。書体は岩田明朝体。まず目次が1頁、その裏が装幀クレジット。
最初に「玉ねぎのお話し」という童話があって、あとは彼女の詩と手書きの譜面。奥付は活版で横組。すっきりときれい。
今日の一曲はDance Me To The End Of Love/Leonard Cohen