W杯、斎藤晴彦さん、Bobby Womack

サッカーのW杯のつづき。決勝トーナメントはどのチームも必死だ。いっそう走るスピードがあがっている。見ていてあっという間に時間がたつ。守備のよいチームが残っていく。ドイツもブラジルもディフェンスが安定している(これは準々決勝の話。今朝の準決勝のブラジルは、ネイマールを失ってボロボロ。ドイツに惨敗)。なんて、素人は眠い目をこすりながら楽しんでいたのだが、イビチャ・オシムさんはちがう。走りまくったり、過剰なブロックは美しくないのだ。ネットの「Sponichi Annex」のサッカーコラム。

 

「ボールと一緒に相手の足を蹴ったり、ボールと無関係に相手を蹴るのはサッカーではない。格闘技なら格闘技の大会に、演技(シュミレーション)なら劇場に行くべきだ。」「確かに走ることはサッカーにとって必要だが、走るだけなら陸上競技に参加した方がいい。」「オランダは本来、美しいサッカーをする国だが、今回は違う。創造的なスタイルも、破壊的な(相手の長所を消す)スタイルもできるのかと思っていたら、コスタリカを相手にしてもエレガントに試合を進めることができず、ガッカリした。」

 

「ブラジル代表ともあろうものが、20歳を少しでたばかりの、まだ成熟していない若者ばかりにたよるとは」(今日の準決勝でこの通りの結果になった)

 

「現代のサッカーは、内容より結果や外見がもてはやされる。それはサッカーというスポーツ、ゲームではなく、マネーが優先される産業になっているからだ。W杯開催国が優勝を目標に掲げるのは当然だが、そのための推進力をネイマールひとりに期待するのは気の毒だ。ネイマールはサッカー関係者やブラジル国民の期待ばかりでなく、その背後にいる、巨額の投資とその回収のことばかり考えている人々にも責任を負わねばならないのだろか。」

 

そうなんだね……。最後のことは、前回の飯島洋一さんの現代建築批判にも通じる。世界を覆う資本主義。飯島さんの「ユリイカ」での特別掲載は7月号で終わった。そしてこんな風にしめくくられている。

 

〈この世界には、すでに資本主義の確固とした代替案は存在しない。今後も、資本主義体制の批判はできても、そのしかるべき代替案は、どこからも出て来ないはずである。だからいまのような資本主義体制のまま、世界は今後もずっと突き進むしかない。だから、全てがますます、経済至上主義と経済問題優先で決められていくはずである。〉〈結局、いくら資本主義を激しく批判しても、最終的な結末は、資本主義の勝利に終わるのである。その理由は、何度も書いたが、実に簡単明瞭な話である。資本主義とは、ただの空虚だからである。資本主義は、利潤や営利以外には、基本的に何も考えていない。資本はお金のことしか心配していない。そのように、あきれるほどの空虚に対して勝てる者など、この世の中にいるはずがない。したがって建築家は、これからも、イデオロギー抜きの趣味的な社会で、ただ資本主義体制に倣っていくだけである。少なくとも、いま、はっきりとわかっていることはーーこれは絶望的な事実であるがーーただ、それだけなのである。〉

 

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このブログを始めたのは、今年の4月だけれど、私の知り合いで亡くなったひとのことを書くのはこれで三回目。

 

斎藤晴彦さんが亡くなった。90年代に黒テントのポスターやチラシを手伝っていたことがあるので、お会いすれば親しく声をかけていただく。数年前に神楽坂のシアターイワトの「タイポグラフィセミナー」で、平野甲賀さんの初期のブックデザインについて、公開インタビューしたときに朗読をお願いしたらこころよく引き受けてもらえてとても嬉しかった。

 

斎藤晴彦さんとBobby Womackの死亡記事が、同じ6月29日の日曜日の新聞にならんでいた。73歳と70歳。月曜日の朝、バラカンモーニングは、ウォーマックだけ。午後は、大竹まことが斎藤さんのことを少ししゃべったが、ウォーマックは当然ない。NHKの「すっぴん」ではどちらもなかったみたい。(カラー写真は東京新聞、モノクロは朝日)

 

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Bobby Womackを知ったのは1971年の“COMMUNICATION”と72年の“Understanding”のアルバム。森英二郎さんと彼のお兄さんがやっていたスタジオでよくかかっていた。音楽にもしびれたが、ジャケットがかっこよかった。前者はArt DirectionがNorman Seef(写真も)とJohn Van Hamersveld、あとのは写真とArt DirectionがNorman Seefで、デザインがDave Bhang。Seefも Hamersveldも、当時あこがれの写真家でデザイナーだった。バックはMuscle Shoals Sound(“Understanding”はメンフィス録音とまじる)。

 

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というわけで、今回は本の話はなくて、普通のブログ。次回は矢吹申彦さんの新刊『東京の100横丁』について書きます。

 

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今日の一曲はもちろんウォーマック。斎藤さんにあわせるとクルト・ワイルになるか。でも、とりあえず、資本主義にもひっかけて。

 

Medley: Monologue(They Long To Be)Close To You/Bobby Womack

 

伊野孝行君が、上野の森美術館のギャラリーの「絵を描くはじめ」展に参加して100号の大作のエスキースを展示しています。

 

http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=68
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