俳句雑誌
安西水丸さんが、あの撮影の間なぜ無口だったのか、その後の仲原君からのメールでわかった。「あの日、安西水丸さんのお母上が亡くなっていたと高取(英)さんに聞きました。それにもかかわらず来てくれたんだと。」
俳句雑誌「ku+」(クプラス)のデザインをした。これは私の友人の俳人、高山れおな君が仲間と出版したもの。高山君は美術雑誌の編集者で本業は俳句。彼の三冊の句集は私の装幀。
第一句集『ウルトラ』(1998)、第二句集『荒東雜詩』(2005)、第三句集『俳諧曾我』(2012)。
その高山君が仲間と俳句の雑誌をつくるというので、デザインをやらせてもらった。俳句は大好きなのだが、作句はかなしいくらい下手。以前、知り合いの小さな出版社で月に一度の句会に参加して石寒太さんの教えをうけたが、からきしできなかった。その句会はいつのまにかなくなった。
俳句の組版は普通の文章とはちがう。ベタで組んだり、字間を四分くらいあけたり、各俳句の天地をそろえる組み方がある。改行はなし。文字の大きさを下げた前書きがつくものもある。高山君の句集は、第一、第二ともに句は天地揃え。第三句集はかわっている。中綴じのうすい八分冊を函に入れてある。各分冊ごとに組版も装幀も同じではない。それぞれが違うスタイルの俳句集のあつまりだからだ。
「ku+」のロゴは岡澤慶秀君のデザイン(『俳諧曾我』のタイトルも彼のレタリング)。岡澤君の「どうろのじ」をアレンジして作ってもらった。毎号かえてもらうつもりだ。本文の二つの特集の扉絵は丹下京子さんと伊野孝行君。表紙は霜田あゆ美さん。彼女がグループ展で描いた絵がカッコよかったので使わせてもらった。扉は飯田鉄さんの写真。
使用書体名は複雑になるのでまとめずに、パートごとにいれた。和文書体は字游工房のものと秀英体。欧文はHoefler & Co.のKnockoutをメインに使う。判型はA5判変型(左右を8ミリつめて140ミリ)。144ページ並製。印刷は、れおな君の句集でおなじみのアポロ社。今回も無理難題をお願いしたが快く引き受けていただいた。仕上がりも上々。PDF入稿。
中身にあわせて、とんがったデザインにしたかったがなかなかうまくいかないものだ。刃先がなまくらになっているのか。せんないことだが、前回紹介した30年前のような自分の〈キレ〉がほしい。表紙の絵を大きくしてロゴを小さくするか、その逆で絵は小さくロゴを大きくするかまよったが、ご覧のようにロゴは巨大になった。
創刊号の特集は「いい俳句。」と「番矢と櫂」。107人の俳人からの「いい俳句とは何か。」のアンケートの回答は、「いい俳句」のアンソロジーにもなっている。107人の視点でいろんな句が読める。座談会での〈この停滞やアノミーの正体を名指すとしたら、「理想が低い」。個々の作家の意識が、見えない形で押し下げられていて、その自覚がないことが問題なのではないか。〉という発言は、現在のデザインやイラストレーションにもあてはまる。予定は年二回刊。購入申し込みはkuplus.haiku@gmail.com
私が好きな俳人は久保田万太郎。好きな句はたくさんあるが、今日はこの一句。
時計屋の時計春の夜どれがほんと
今日の一曲はこれWon’t Be Coming Home/Robert Cray Band